昨今ではAI(人工知能)という言葉聞かない日はないといういうくらいに、AIがもてはやされていますが、みなさんは「AIってそもそも何なの?」と質問された際に、すぐに答えることができるでしょうか?
頻繁に聞く言葉ではあっても、いざ定義を聞かれると説明するのが難しいのではないでしょうか?
実は人工知能というのは研究者の間では次のように定義がなされています。
推論、認識、判断など人間と同じ知的な処理能力を持つ機械(情報処理システム)
少し抽象的で分かりづらいですね。
今回はこの抽象的な定義への理解を深めていただけるよう、人工知能の歴史を振り返りつつ、解説していきたいと思います!
人類初のコンピュータ
人工知能以前にそもそも人類が初めてコンピュータと呼ばれるものを手にしたのは1946年のアメリカでした。ENIACと呼ばれるそのコンピュータは重さ30トンにも及ぶ超巨大計算機で、戦争において弾道の軌道を計算するために開発されました。現在のMacbook airは約1.2kgなので、それと比較するととてつもない重さですね。ただ、従来は人間が行なって7時間以上かかっていた計算を僅か3秒で実行できたことから、コンピュータというものへの期待が大きく高まることとなりました。
ちなみに、一般的にはENIACが世界初のコンピュータと言われていますが、アメリカのABCやイギリスのColossusを世界初という場合もあるようです。これらのコンピュータは戦争真っただ中に開発されたため、当初は公になることはなく、戦後に時間が経過してから徐々に情報が開示されるようになりました。
第1次AIブーム(1950年代後半~1960年代)
世界で初めて人工知能(Artificial Intelligence)という言葉が提唱されたのは1956年にアメリカで開かれたダートマス会議です。それまでは、四則演算などの数値計算のみだったコンピュータが数学の定理を証明できることが示され、注目を集めました。
ここから第1次AIブームが始まりますが、この期間は推論と探索の時代と呼ばれています。
「推論と探索」というのはスタートからゴールに向かうあらゆるパターンを検討して、ゴールに至るまでの方法を導き出すことです。このような手法は探索木とも言われます。
最も分かりやすい例としては迷路があるでしょう。迷路ではスタートからゴールに至るまで、「右に行くのか?左に行くのか?」または「上に行くのか?下に行くのか?」といった選択を何度も行なう必要があります。探索では選択の度に右・左・上・下を選んだ全てのパターンを検討します。全てのパターンを検討した結果、どのように進めばゴールに最短で辿り着けるのかを推論することができるようにということです。
ただ、一方でこの方法には限界があります。我々が現実に解きたい問題は全てのパターンを探索できるとは限りません。例えば、「企業の売上を伸ばすにはどうすればよいか?」といった抽象的な課題に対しては全ての行動パターンを洗い出すといったことは不可能です。また、パターンを洗い出せたとしても、その数が膨大であれば当時は対処することができませんでした。上記の迷路の例もシンプルな物であればよいですが、超巨大迷路であればパターン数が膨大過ぎて解くことはできませんでした。
このように、第1次AIブームではごく簡単な限られた問題(トイ・プロブレム)しか解くことができず、1960年代にブームは沈静化していきました。
第2次AIブーム(1980年代)
第2次AIブームは知識の時代と呼ばれます。
この時には専門家の膨大な知識をデータベースに取り込むという発想で人工知能開発がなされました。まさに専門家のコピーを作ってしまおうという発想ですが、このようなシステムはエキスパートシステムと言われました。
エキスパートシステムの事例としてはMYCINというものがあります。これは血液中の診断支援をするシステムで、ユーザーがYes/Noで質問に答えていくと、感染した細菌を特定して適切な抗生物質を推奨してくれます。性能としては、感染症を専門としない医師よりも高確率で正しい特定ができるという画期的な結果でした。
MYCINの中には「質問の答えの組み合わせが○○なら細菌の種類は△△だ」といったルールが大量に埋め込まれており、これを使って判定をしていました。ユーザーからはMYCINが医師のように質問をして診断しているように見えたので、非常に注目を集めた事例です。
ただ、やはりこのエキスパートシステムという考え方にも限界がありました。専門家の知識は論文のような形で明確に言語化されているものもありますが、暗黙知も大変多くあります。いわゆる職人技のようなものですね。長年の経験に裏打ちされた感覚のようなものは体系的に言語化するのが困難であるため、人工知能に埋め込むことができませんでした。しかし、得てして真のノウハウというものは、こういった暗黙知に潜んでいることが多く、それを習得できない人口知能は専門家に追いつくことはできませんでした。
さらに専門家の考え方というのは必ずしも統一されているわけではありません。例えば、「健康のために運動は毎日やるべきだ」と言う専門家もいれば、「毎日は負担が大きいので週の半分くらいがよい」という専門家もいるわけです。こういった矛盾した意見をうまく取り込んでいくこともとても大変でした。
このような困難に直面したことから第2次AIブームは1990年代半ばに幕を閉じることになりました。
第3次AIブーム(2010年~現在に至るまで)
第3次AIブームは機械学習・特徴表現学習の時代と呼ばれます。
近年、ハードウェアの性能が一気に向上し、膨大な量のデータ(ビッグデータ)を処理することが可能になってきました。このビッグデータを用いることで、コンピュータが自ら学ぶ機械学習の実用化が現実味を帯びてきました。
機械学習の中でも特に注目を集めている技術がディープラーニングです。画像認識などが特に有名ですが、ディープラーニングを用いると、(画像のタスクであれば)画像の性質を決定づける特徴量をコンピュータが自ら探し出して習得していくのです。
ここではディープラーニングの詳細は説明しませんが、2012年に開かれた画像認識大会(ISVRC)でトロント大学がAlexNetと呼ばれるディープラーニング技術を用いて、記録を大幅に塗り変えて優勝したことでブームが大きく加速しました。
第3次AIブームは現在も継続中で、日々新しい技術が生み出され続けています。
つまり人工知能(AI)とは何なのか?
繰り返しになりますが、人工知能は研究の間で推論、認識、判断など人間と同じ知的な処理能力を持つ機械(情報処理システム)だと言われています。
しかし、「人間と同じ知的な処理能力」という部分は様々な解釈が可能であるため、研究者の間でも意見が分かれており、実はまだ統一的な定義は形成されていません。
出典 総務省「第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI~ネットワークとデータが想像する新たな価値~
そして、歴史を振り返って見て分かるように、人工知能というのは時代に合わせて時々刻々と進化を続けています。絶えず変化し続ける人工知能の共通の定義を定めるのにはもう少し時間がかかるのかもしれません。
最後に
今回は人工知能(AI)の歴史を振り返りながら人工知能とは何かについて考えてみました。
この記事がAIの時代に生きるみなさんの教養としてお役に立てれば幸いです!!
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