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【読後感想】ベンダー選びの落とし穴を学べ『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』

今回はシステム開発におけるベンダー選びで起こりがちな失敗を教えてくれる書籍を紹介します。

昨今はDXが声高に叫ばれ、ICTシステムが企業の経営に与える影響はますます大きくなっています。そのため、IT企業や情報システム部門で勤めていない方であっても、ICTシステムに携わる機会は今後増えていくものと思います。

この書籍はシステムを導入する側の立場に立って、「システム導入を依頼するベンダーを選ぶときにはここを押さえろ」というポイントを明快に示してくれます。

それでは、早速内容を見てみましょう。

概要紹介

著者の田村昇平氏はベンダー側で10年、ユーザ側で13年のITプロジェクト経験をお持ちの方です。著者曰はく、ベンダー選定の落とし穴には全てハマってきたとのことで、その経験を結集したのが本書というわけです。

ここでは、本書のアドバイスをいくつか抜粋して紹介したいと思います。

経営層と現場の双方の意思を組み合わせ、会社として最適な解を出す。もし双方の意見が真っ向からぶつかったとしても「どちらが正しいか」ではありません。「両方正しい」という前提に立って、両者の間で「板挟み」に遭いながら必死に考え抜きます。

『御社のシステム発注はなぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』 P73

システム導入において、経営層と現場で意見が食い違うのはあるあるです。経営層は業務改革のために大きなビジョンを描く一方で、現場は目の前の課題と常に格闘しているからです。同じ業務を見ているにも関わらず、両者では見えている世界がまるで違います。

経営層の声を聴き過ぎれば現場で使われないシステムが出来上がり、現場の声を聴き過ぎれば現行の延長のようなシステムが出来上がってしまうリスクがあります。

そんなリスクを理解したうえで、プロジェクトを率いる人間は両者が納得できる最適解を見つける覚悟を持つことを説いてくれています。

RFIがあることで「広く浅く」が可能になり、その後の「狭く深く」につなげられます。私は、RFIこそ、選定における「発明」だと考えます。RFIが「じょうご」として機能するからこそ、選択肢が多くなっても「プロセス」で吸収できます。

『御社のシステム発注はなぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』 P104

ベンダー選定と言えば、RFPを出してベンダーから提案をしてもらうということも大切ですが、それ以前に行なうRFIの重要性を説明しています。

ベンダー選定では、できるだけ多くのベンダーを候補として検討したいですが、多くのベンダーから見積もりや提案をもらっても処理する側が間に合わなくなってしまいます。そんな時に役立つのがRFIです。

RFIを通してベンダーに基本的な質問に答えてもらうことで、手間を抑えながら多くのベンダーをふるいにかけることができます。

本書ではRFIで確認すべき事項も事細かに説明されています。

ノウハウを溜め込んだIT部門がPMOとしてプロジェクトを管理することで、常に安定したプロジェクト運営ができるようになるのです。これは、ユーザー企業にとって、非常に大きな「成長のエンジン」を手に入れることになります。

『御社のシステム発注はなぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』 P200

企業のIT部門は下手をすると、ベンダーとのやり取りをする窓口のような立場になってしまうことがあります。

しかし、彼らを単なる窓口にしてしまうことは企業にとって損失です。なぜなら、彼らはシステム導入のプロジェクトを豊富に経験できる部門だからです。

豊富なプロジェクト経験に裏打ちされたノウハウを生かして、プロジェクト管理を担ってもらえば、企業にとっては非常に心強い存在になります。

そんな「疎遠」なメンバーの熱量を引き上げるには、どうすればよいでしょうか?
プレゼンという重要な「儀式」に参加させるのです。
その後のベンダー評価で、そのメンバーの意見も聞きながら進めていきます。一緒にベンダー評価・選定の「プロセス」を踏んでいきます。プロジェクトの一員として「尊重」するということです。

『御社のシステム発注はなぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』 P273

プロジェクトメンバーにいかにして当事者意識を持ってもらうかを説いた一幕です。

プロジェクトへの関与率はメンバーによって様々です。専属でそのプロジェクトに関与しているメンバーもいれば、複数のプロジェクトを掛け持ちしているメンバーもいるでしょう。

関与率にばらつきがあることは仕方がありませんが、メンバーに当事者意識を持ってもらうことは重要です。なぜなら、当事者意識の高いメンバーは、プロジェクトが壁にぶち当たった時に助け舟を出してくれるからです。

変に気を遣って、忙しいメンバーを遠ざけるのではなく、当事者として積極的に巻き込んでいこうというのが本書のメッセージです。

変革プロジェクトにおいては、この反発が必ず「イベント」として発生します。
逆に、そのようなイベントが発生せずに「順調」すぎるなら、大きな変革に「チャレンジ」していないとも言えます。

『御社のシステム発注はなぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』 P331

変革を伴うシステム導入は現場のオペレーションを大きく変えることになるため、反発が発生することは必至です。

本書では、現場からの反発は大きな効果の前ぶれとして歓迎すべきものだとしています。

反発が起きないようにするのではなく、反発を承知の上で現場と粘り強く調整して、変革を進めていく姿勢こそが真に求められているということです。

個人的な感想

上記ではあまり紹介できませんでしたが、本書ではRFPで書くべきポイントやベンダーからの提案を評価する方法などが細かくかつ明瞭に説明されており、現場でも使える代物です。

また、単に方法論が詳しく書いてあるだけでなく、なぜそのような方法が有効なのかがしっかり説明されているので、読んでいる時の腹落ち感も折り紙つきです。

やはり、長年の実務経験を持つ著者が書いているだけあって、教科書的な書物とは一線を画します。

私自身ITコンサルとして、RFPの作成やベンダーの選定を支援することがありますが、時々この本の内容を参照させてもらっています。教科書的ではないと言いましたが、とても分かりやすく書かれているので、実務経験の浅い方が読んでも、十分に理解できる内容である思います。

私もこれくらいの内容が語れるようなITコンサルになりたいものです。

こんな人におススメ

こんな人におススメ
  • システム導入プロジェクトのプロマネ
  • ICTシステムで会社を変革したい経営者
  • 企業の情報システム部門
  • ICTシステムを導入しようとしている部門のリーダー
  • ベンダー選定を支援するITコンサルタント
ABOUT ME
keikesu
電気機メーカーのエンジニア、オフィス・工場向けIOTシステムエンジニアを経て、現在は大手のコンサルティングファームに在籍し、様々な組織のDXを支援するITコンサルタントをしています。 JDLA G検定・E資格を取得しているので、このブログではディープラーニング(主に資格試験関連)の基礎的な内容を投稿しています。