応用情報技術者試験

【まとめて解説】投資効果の評価方法をまとめて解説

ここでは応用情報技術者試験のストラテジ分野に登場する投資効果評価方法を説明します。

情報システム投資計画に基づいてなされる投資の効果を見積もる方法は主に次の4つが知られています。

NPV

NPVはNet Present Valueの略称で、日本語で言えば正味現在価値法となります。
NPVの計算は以下の3ステップによって行うことができます。

  1. 投資によって将来得られるであろう利益額を試算する
  2. その利益額を現在価値に換算する
  3. 現在価値から投資金額を差し引いて、正味の利益を求める

「現在価値」という言葉が分からない方もいるかと思いますが、一旦それは置いておきます。

仮に現在価値換算後の利益が10億円で、投資金額が9億円なら、利益の方が大きいので、投資すべきだという判断になります。大小が逆であれば、投資しないという判断になります。

NPVの全体像を説明したところで、最後に「現在価値」という言葉の説明をします。

ステップ①で将来の利益を計算していますが、将来の利益を現在の価値に換算したものが現在価値です。

つまり、1年後に得られる100万円と今すぐ得られる100万円は同等ではないということです。一見すると、同じ100万円なのに、なぜ価値が異なるという考えになるのでしょうか?

お金は投資や預金によって増やすことが可能です。例えば、今手元に100万円があって、1年間の投資で3%増やすことができれば、1年後には100万円が103万円になります。しかし、100万円をもらえるのが1年後であれば、今すぐ投資をすることはできず、1年後には100万円が手元に来るだけです。

このような現象が発生するため、今の100万円の方が1年後の100万円より価値が高いと考えられています。

では、これを数式で表現してみます。仮に毎年$r$%の割合で投資などでお金を増やせるとすると、現在の$P$万円の$n$年後の価値は以下のような数式で表せるはずです。

(n年後の金額)$= P \times (1+\frac{r}{100})^n$

これは$n$年後の金額を求める数式ですが、これを以下のように変形すれば、$n$年後の金額を現在の金額に換算する数式になります。

$P = \frac{(n年後の金額)}{(1+\frac{r}{100})^n}$

これが現在価値を求めるための数式です。仮に1年後の100万円を$r$=5%の前提で、現在価値に換算すると、95.2万円になります。
$r$は割引率と呼ばれます。将来の金額を現在価値に割り引いて換算するという意味から、このように名付けられています。

NPVを計算する際には「$n$年後の金額」という部分は、「投資をしてから$n$年目の利益」と考えることができるため、NPVの計算式は次のようになります。

NPV = $\frac{1年目の利益}{(1+割引率)} + \frac{2年目の利益}{(1+割引率)^2}+\frac{3年目の利益}{(1+割引率)^3} + …… + \frac{n年目の利益}{(1+割引率)^n} \quad – \quad 投資金額$

IRR

IRRはInternal Rate of Returnの略称で、日本語で言えば内部利益率です。

IRRはNPVがゼロになる時の割引率です。

NPVの計算式から分かるように、割引率が大きくなればなるほど、現在価値は小さくなります。裏を返せば、「NPVがゼロになる時」という一定の条件で割引率を求めた際に、その値が大きくなるということは、毎年の利益額(計算式の分子)が大きいということです。

このような性質があるため、複数の投資案件を並べた際にIRRが大きい方がよい投資案件だと考えられています。

ちょっとイメージしづらいかもしれないので、以下の2つの例で比較してみましょう。

投資額1年目の利益2年目の利益3年目の利益
100万円50万円50万円50万円
100万円60万円60万円60万円

求め方は簡単で、先ほどのNPVの計算式の左辺をゼロにするだけです。

$0 = \frac{50}{(1+r)} + \frac{50}{(1+r)^2} + \frac{50}{(1+r)^3} \quad – \quad 100$

$0 = \frac{60}{(1+r)} + \frac{60}{(1+r)^2} + \frac{60}{(1+r)^3} \quad – \quad 100$

この方程式を計算するとIRRは前者が23%、後者が36%となります。表を見て分かるように、投資としては明らかに2つ目のパターンの方がよいので、それに応じでIRRも大きくなることがご理解いただけたかと思います。

DPP

DPPはDiscounted Pay-Back Periodの略称で、日本語で言えば割引回収期間です。

これは投資回収に要する期間を投資の判断材料にする手法です。言い換えれば、投資回収に要する期間が短い投資を良い投資と見なすということです。

具体的には1年目のNPV、2年目のNPV、3年目のNPV・・・と計算していき、その合計が投資金額を上回ったところが投資回収にかかる期間です。

ROI

ROIはRerun on Investmentの略称で、日本語で言えば投資利益率です。

具体的には投資額に対する利益の割合です。

ROI = $\frac{投資による利益}{投資金額} \times 100$

1000万円の投資で2000万円儲けることができれば、ROIは200%ということになります。当然ながらROIが大きい方が良い投資ということになります。

ABOUT ME
keikesu
電気機メーカーのエンジニア、オフィス・工場向けIOTシステムエンジニアを経て、現在は大手のコンサルティングファームに在籍し、様々な組織のDXを支援するITコンサルタントをしています。 JDLA G検定・E資格を取得しているので、このブログではディープラーニング(主に資格試験関連)の基礎的な内容を投稿しています。