ディープラーニングG検定

【具体例もご紹介】シンボルグラウンディング問題を分かりやすく解説

今回はフレーム問題と並んで人工知能の難問と言われているシンボルグラウンディング問題を取り上げてみたいと思います。

シンボルグラウンディング問題

人工知能が文字列・言葉などの記号(シンボル)を実世界の概念と結びつけて(グラウンディング:接地)理解することができないという問題

人工知能を理解するうえで、「何ができるのか」も大切ですが、「何ができないのか」を把握しておくことも同様に大切です。シンボルグラウンディング問題はその代表的な例なので、具体例を用いて分かりやすく説明してみようと思います。

シンボルグラウンディング問題とは?

シンボルグラウンディング問題の定義は一見難しそうに見えたかもしれませんが、シンプルに表現すれば、人工知能は人間のように文字列や言葉を理解しているわけではないということです。

最近の人工知能は性能が指数関数的に向上しており、例えば特定分野の画像認識などでは人間以上の性能を発揮するため、表面的に見れば人間と同等かそれ以上の認知能力があるようにも思えてしまいます。それほどに優秀な人工知能ですが、実は人間が当然のように備えている認知機能を持っていないことが指摘されています。

例えば、「ノート」と「パソコン」という単語を知っている人間がいるとします。これらの単語を知っているということは、単語を聞いたときにその具体的な形状や手触りなどが頭の中にイメージできるでしょう。つまり、言葉と実物が頭の中で結びついていることになります。

また、このような人が「ノートパソコン」という単語を初めて聞いたらどのような反応を示すでしょうか?実物は見たことがないので明確には分からなくても、なんとなく「ノートのような形をしたパソコンかな」と想像できるのではないでしょうか?そして実際にノートパソコンを目の当たりにすれば、「これがノートパソコンだな」と認知できるでしょう。

このような認知の仕方は我々人間にとっては自然なことですが、人工知能にとってはどうでしょうか?例えば「ノート」と「パソコン」を画像認識できる人工知能は何も手を加えることなく「ノートパソコン」を認識できるのでしょうか?残念ながら答えはNoです。なぜなら人工知能は言葉や文字列をその実物と結びつけて意味を理解しているわけではないからです。画像認識で「ノート」を認識できると言っても、人工知能の頭の中に人間が思うような「ノート」のイメージが浮かんでいるわけではなく、あくまで数値計算上の話でしかありません。それ故に「ノートパソコン」と言っても人工知能はそのイメージを既知の情報から想起することができないのです。これがシンボルグラウンディング問題です。

なぜシンボルグラウンディング問題が発生するのか?

シンボルグラウンディング問題の定義を考えると、その解決のためには、人工知能が現実世界の実物を理解できればよいということになります。

では、なぜ人工知能は人間のように現実世界の実物を理解することができないのでしょうか?

その理由を説明する1つの仮説が身体性です。人間はある物事を理解するのに五感を活用してその実態を把握することができます。何らかの道具であれば形状や手触り、または実際にそれを使った経験を学びとることができます。飲食物であれば味や匂いなども理解に役立てることができるでしょう。このように、物事の認知には身体が必要不可欠であると考えるのが身体性です。

身体性が正しいとすれば、身体を持たない人口知能は人間のようなアプローチを取れないため、物事を真の意味で理解することは不可能という結論になってしまいます。

シンボルグラウンディング問題は解決できないのか?

ここまでシンボルグラウンディング問題がいかに難問であるかを論じてきましたが、もちろんそれを解決するための取り組みも行われています。

例えば、「ウマ」を認知できる人工知能が「シマウマ」を全く認知できなくなってしまうのは、両者を関連付けることができないからだと考えます。ウマとシマウマは全く同じものではありませんが、似ているところも多いので、これらを類似したものだと解釈できれば認知能力の向上につながります。

そこで類似性を考慮するために、物事をベクトルを使って表現します。ベクトルというのは方向を表すことができます。従って、同じような方向を指すベクトルは互いに類似している、一方で全く違う方向を指すベクトルは互いに異なるものという判定が可能になるのです。

例えば、犬、猫、車をベクトルで表すなら次のようなイメージです。犬と猫は動物という意味で似たような方向のベクトルになりますが、それに対して車は全く異なるものなので、ベクトルの方向が犬や猫とはおおきくずれます。

このようにすれば、過去に学習したことがないものであっても、類似のベクトルの情報を使って推論ができるようになるというわけです。

しかしながら、これは身体性を打ち消すものではありませんし、まだまだ用途は限定的です。従って、本質的にシンボルグラウンディング問題を解決できるというわけではないので、人工知能が人間並みの認知能力を得られると結論付けるのは時期尚早でしょう。

最後に

最後までよんでいただきどうもありがとうございました。今回は人工知能の難題であるシンボルグラウンディング問題を説明してみました。

フレーム問題の際にも述べましたが、とても賢い人工知能が人間なら当たり前にできることに苦戦するのは何とも逆接的でとても興味深いですね。

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ABOUT ME
keikesu
電気機メーカーのエンジニア、オフィス・工場向けIOTシステムエンジニアを経て、現在は大手のコンサルティングファームに在籍し、様々な組織のDXを支援するITコンサルタントをしています。 JDLA G検定・E資格を取得しているので、このブログではディープラーニング(主に資格試験関連)の基礎的な内容を投稿しています。